ひとの温度

はじめましての方とのお打ち合わせ。対面とオンライン、どちらでもとのことだったので、先方の事務所におうかがいすることにした。その事務所は、2路線の間を結ぶように通る幹線道路沿いにある。どちらの駅からもまっすぐ一本道だ。

帰り際、「わざわざご足労いただいて」と言いながら、担当の女性がビルの出口までお見送りくださった。どちらの駅からお帰りかとたずねられ、来たときとは反対の駅に向かうと伝えると、通りまで出て遠くを指差す。「ほら、あの向こう側、赤い郵便局の看板、見えますか? その手前が地下鉄の入り口です」。ていねいに教えてくださったのだった。

たったそれだけのことなのだけれど、それだけとも思えない。

帰り道、なんとなく感じた心地よさや、いい方だったなあという余韻。思い出すのは仕事の内容でも納期や条件でもなく、ささいなやりとりだ。

人と人との関わりは、小さくも確かな温度で成り立っている。わたしが見つめていたいのは、そういうことなのだとも、思っている。

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