あいうえおは陽キャ
スレッズを眺めていたら、「九九の中で7×7=49が断然かっこいい」というようなつぶやきが流れてきた。実際のところ7×7だったか、6×8だったか、そのあたりの数字は定かではないのだけれど、ほかにも例が挙げられており、さらに「わかります!」「わたしは2×8=16が最強です!」みたいなレスがたくさんついていた。
ひえー、と思った。まったく意味がわからない。数字に色がついて見える人がいるのは聞いたことがあるけれど、それとも違うようだ。中には素数の美しさについて語っている人もいて、ますます意味がわからなかった。
しかし、これはわたしにとっての「あいうえお」かもしれない。
「あいうえお」は陽キャだと思う。明るく快活。戦隊ヒーローなら間違いなく赤だし、クラスにいたら学級代表。そもそも「あいうえお」は母音ゆえに、すべての源という感じがするから、これには多くの納得してもらえるんじゃないかと思う。さらに出席番号が早い人たちは明るい人が多い、というわたしの勝手なイメージもある。
「かきくけこ」は、シュッとしている。「カツカツ」「カリッ」「キリリ」「コツコツ」みたいな、なんだか固くて冷たい空気をまとっている。少なくともやわらかさやしっとりとは真逆で、乾いている。乾いているといっても、表面がバサバサのガサガサというよりも、ツルツルとした硬質なイメージだ。「かきくけこ」は、プラスチックでできているのかもしれない。
「さしすせそ」は、たおやかだ。「さらさら」「塩」「砂」のせいなのか、粉末めいた感じもある。ただし、片栗粉よりは粒が大きく、コンソメよりは小さい。ちなみに、フルートのような音を出すのも「さしすせそ」の特徴だと思っている。
「たちつてと」は、面である。曲面がない、ぬりかべのような面。大きく広く続いている面。「かきくけこ」よりはやわらかいけれど、「さしすせそ」よりは硬いと思う。おそらく真面目で、きっちりしている。
「なにぬねの」は、やわらかい。アメーバやスライムのような、粘度があるやわらかさだ。そう思う人も多いのではないか。だって「にちゃにちゃ」「ぬるり」「ねっとり」みたいな、見るからに粘度が高そうな言葉ばかりが思いつくのだから。おっとりとした、朴訥なキャラなのかもしれない。
「はひふへほ」は、透明感がある。といっても、コスメのコピーにある「つやぷる」「うるつや」みたいな透明感ではない。天女のベール、冬の空に向かって吐く息、蒸篭から立つ湯気、そういう類のものである。わたがしみたいに、とらえどころのない、掴めないやわらかさもある。半分、この世にいない感じもする。
「まみむめも」を見ると、なぜかいつもダンゴムシを思い出す。自分でもどうしてだかわからない。昔から、ダンゴムシ=まみむめも、なのである。「まるっこい」からなのか、「むし」だからなのか。ほんとに、誰か教えてほしい。
「やゆよ」は、流れている。川のように、ドラえもんのタイムマシンの背景みたいに、一定の方向に流れ続けている。流れているものは何なのだろう。ゆらゆらしながら流れ去っていくのでよくわからない。
「らりるれろ」は、日本ではないどこかから来たのではないかと踏んでいる。らくだにまたがり、月の砂漠を歩いている「らりるれろ」が見える。シルクロード、シルクロード、らりるれろしるくろーど。やはり合点がいく。
「わをん」は、ワダさんとワタナベさんには大変申し訳ないけれど、陰キャそのものだろう。「あいうえお」に比べた「わをん」の地味さといったらない。しかし同時に、縁の下の力持ち感もあり「わをん」はそれを自覚しているのだと思う。だからけっして卑屈にはならないし、とても堂々としている。