リンゴの皮膚科

湿疹が悪化し、皮膚科へ行った。うちから歩いて5分のところにある「リンゴの皮膚科」である。そう呼ぶのはわたしと夫だけで、先生は芸人のハイヒール・リンゴさんに似ているのだった。

最近は、先生がやさしくていねいで、患者というよりも「お客さま」との接客だと感じるような病院が多い。子どもと一緒に行くことが多いからかもしれない。けれどリンゴは違う。大人だろうが子どもだろうが、「ああ、そんなんじゃ治らないわね!」とピシャリと言う。悪いところを早口でまくしたて、わたしの行動を断定する。変な薬ぬったでしょう。かきむしったね。ひどいままに長いこと放置しちゃって。「いや、そんなことないんですけど……」と口を挟む間はない。でも愛情たっぷりにも思えるのは、先生が笑顔だからだろうか。マスクをしているので、いつも目しか見えないけれど、ちゃんと笑ってくれる。ぎゅっと塗られた濃いアイシャドウとアイラインに縁取られた目の、圧力のある笑顔。

今回も厳しく言われながら、こういう上司がいたなあと思い出した。ズケズケとした物言いで、でも同時に愛情もたっぷりですよ、という空気を醸し出す人。わたしは、そういう人に当たりやすい気がする。そしてそのたびに、えへへと笑って交わしてきた。あるときはその上司に、「そんな古着ばっか着てたら彼氏なんか絶対できないわよ!」と何度も言われたのを、いまもたまに思い出す。

湿疹は「こんなに放置してしまって治すのには長くかかる」「あなたが本気で治す気がないから」と散々に言われてしまった。処方された薬は、思いのほかぽっちりの量だったので、近いうちにまた、リンゴに会いに行くのだろう。その日までに、少しは抑え込んでおかねばと、朝に晩にと、せっせと薬を塗り込んでいる。

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