たまごロック
「一番好きな食べ物は?」という質問に「たまご」と答えると、決まってププッと笑われ、「それ、食べ物っていうか食材だし!」と言われていたのはいつ頃のことだったか。
いまやすっかり市民権を得て、堂々と雑誌の第一特集を飾るたまごですから、そのすばらしさとおいしさについては言わずもがな。老若男女みんな大好き、それがたまごの魅力です。
たまごって、命の源、、、というか命そのものだもんなぁ。主役にも名脇役にもなれて、こんなにも今昔かわらぬ値段で安定供給され、世界中で万人に愛されている食べ物ってほかにあるのだろうか。牛乳だって苦手な人は結構いるし、万能選手の米や小麦だって、そのままでは食べられない。
完全無欠とは、ロックンローラーじゃなくて、たまごのためにある言葉かもしれない。
平日、家で作業をしている日のお昼ごはんは、たいてい「のっけ丼」だというのを以前書いたけれど、おかずがないときも多々あって、そんな日はたまごだけを乗せて食べている。
一番よく登場するのは、卵焼きでもオムレツでもない、多めに油をひいたフライパンに、ざっくり溶いたたまご2個(ときには3個)をザーッと流し入れ、ぐるぐるっと混ぜて半熟で火を止める、名もなき、たまご料理。
味つけは、だいたいめんつゆ(生活クラブの万能つゆ)、たまに塩や白だし。
こうすると、卵焼きのような部分と、たまごかけご飯のような、たまごの黄身と白ご飯が渾然一体となる部分とが同時に味わえる。
焼き海苔を添えよう、かつおぶしをかけてみっか、昆布の佃煮を合わせて、おっとごま油をちょろりと、いえいえ大葉のニンニク醤油漬を下に敷きまして、せっかくですから塗りのお重に入れて目にも麗しくしてしまいましょう……などなど、いろいろやりたくなる日もあるけれど(いや最後のはないな)、結局シンプルなのが一番おいしい。
ごはんをチンしている2〜3分の間に、あっという間に完成する。つまり「食べたいぞー」と思ったら、「いただきます」までたったの3分。これより手軽で、潔くてパンチあるおいしいものがあったら教えてほしい。やっぱり、たまごは完全無欠のロックな食べ物だ。